六本木の社畜が代休を駆使して原付で一人旅に出てみた 2日目午後

アレは最早夏の思い出。

これまでのあらすじ
六本木の社畜が代休を駆使して原付で一人旅に出てみた 1日目(山梨県中巨摩郡昭和町→山梨県南巨摩郡南部町)
六本木の社畜が代休を駆使して原付で一人旅に出てみた 2日目午前

気がつけば1年が過ぎました。その前に2日目にあったことは伝えなければならないと思い、キーボードを叩かせていただきました・・・!!

■2日目午後

静岡県沼津市 断られ続けた「おひとり様」 見つからない宿・・・

国道52号を走り、静岡県に入った。静岡の民は皆優しいと聞いていた。

優しいと聞いていた・・・

確かに車は原付に優しい。こちらが時速30キロで走っているのを知っているのでウィンカーを出して追い越しをかけてくれる。
山梨ほどスピードを出さないし、曲がり角や一時停止でちゃんと減速する。(山梨は一時停止直前まで猛スピードで来るのでかなりビビる)

東海道をひたすら走り沼津市街に入った時には既に19:00を超えていたかと思う。
私はこの時判断を誤ってしまったことに気付いた。

「なぜもっと早くに宿を抑えておかなかったんだろう」

通り沿いのセブン-イレブンに停車してiPhoneから宿を探す。
沼津の民宿に電話をかける。

「すみません、今から一人泊めていただきたいのですが、空いていますか」
「あいてない(ガチャッ」

あれ・・・?まあ民宿ですし。。。と思って別の民宿に電話。

「すみません、今から一人泊めてほしいんですが・・・」
「え、ちょっと主人が今日いないのでそれはできません」
「あ、はい、すみませんわかりました他をあたります」

「突然の電話で申し訳ないのですが、、、今から一人(ry」
「あいてません」

おっと・・・??もう近くに民宿ないぞ・・・?

検索結果の最後にある民宿に電話をかけた。

「突然の電話で申し訳ありません。今山梨から原付で伊豆を目指していまして、ただ暗くなってきたので泊まるところを探しています。今から一人って可能でしょうか・・・」
「えっ。一人?んー、、、うちは二人からしか・・・お一人様は受け付けていないんです

お一人様は受け付けていないんです

お一人様は受け付けていないんです

お一人様は受け付けていないんです

お一人様は受け付けていないんです

お一人様は受け付けていないんです

一瞬、その言葉の意味を理解するのに時間がかかった。

「えっ、あ、はい、わかりました。失礼しました」

そういってそそくさと電話を切ってしまった。しまった。詰んだか。不安が押し寄せてくるのを感じた。
沼津市街まで出ればビジネスホテルがあるだろうから、おもしろくないけどそこにしよう。と思い、沼津市街入り。
JR沼津駅前の商店街の脇に駐車してビジネスホテルを当たる。

「もう部屋が空いてないんです」
「少し前に満室になりまして・・・」

クソッ!と毒気を吐きかけたが、すべては自業自得。計画性のない自分への憤りをおさえつつ、しばらく南下してみた。

沼津港近くのコンビニでおにぎりを買って食べると、不安も少々収まり、冷静さを取り戻した。やっぱり人間は糖分が不足すると、冷静さを失って不安に包まれてしまうのだと体感。お米 is 最高の不安抑止剤。

ふぅ、と思って原付にまたがりながら思案した。念のため近くのビジネスホテルに電話をかけて空きを尋ねるも「御殿場までいけばダブルの寝室がひとつある」という回答以外は「すでに満室」ということしかいわれなかった。
よし、それならば・・・

野宿を決意した

高校時代荒れていた私は何度か実家を追い出されて高校の制服姿のまま橋の下で眠ったりした経験があったので、余裕だと思った。

近くに公園か、神社か寺があれば、その境内でお世話になろうと思って寺社を探していると・・・

なにやら屈強そうな若者が集団で集まりだしておられる

時間はすでに20:30を超えているというのに!地元の中学生か、高校生か。ガタイがすばらしくいかつい。彼らはコンビニの前にヤンキー座りをして、円を組んでガリガリくんを食していた。時折、この大荷物を持って「昭和町」という現地にはないナンバーを持った原付が気になるのか、やたら見てくる。
視線が何度も合う。

私の原付に興味があるらしい。田舎の農民的直感がはたらいた。
原動機付自転車なぞキーがなくとも動くという原理を彼らは知っているに違いない!
沼津のヤンキーは怖い。

市街近くで野宿すること=足を失う

そう考えた私は、とにかく現場から離れることに努めた。
私はひたすら南下することにした。
南下した先に適当な宿泊施設や公園があればそこで仮眠をとるという作戦にした。

とにかく海を見たい。

どうせ息絶えるなら海が見えるところで死にたい。
海のない県に生まれた日本人の性がむき出しになっていった。

伊豆半島 死の彷徨

国道414号線を南下し、県道17号と交わる「口野放水路」という交差点を右折、県道17号を走るコースに入った。
県道17号は海沿いのルート。普通は下田街道に入り、国道136号線を南下してから伊豆を目指すのが速いらしい。
しかし、「海が見たい」という理由で県道17号を選択した。

すでに21:00は超えていたので、一面暗闇だが、海の音と匂いがした。

その時点でこの旅の目的はほぼ達成されたような気がした。
あとは寝床を見つけて、生き残ることだけがこの日の任務となったのである。海沿いを行くこと1時間。
コンビニを見つけて店員に問う。

「この近くに、公園はありますか」

コンビニの店員さんは私のいでたちを見て、何かを察したらしく

「ひいてください」

と700円以上購入した人がひけるくじをひかせてくれた。私はおもむろにくじを引いた。

キシリッシュがあたった。

「公園はありません(キリッ」

え、今のなんだったの??

飲み物と野宿用にレジャーシートを購入。ついでに野宿するときの寝酒を少々購入。

しばらく県道17号を海沿いに走る。

途中寝れそうな公園を発見する。地震が起きた際の避難所に使われるであろう綺麗な公園だ。
いざそこにバイクを止めたとき

通報されるのではないだろうか

という不安が脳裏をよぎる。(いや、通報されたとして、別にやましいことはないし、正直に経緯を話せばいいだけだと思うのだが)

このへんでiPhoneの電池が心許なくなってきた。iPhoneのMapアプリは命綱のようなもの。

無駄な通信を避けるべく、電源を切っての移動を繰り返した。時間はすでに23:00を超えており、眠気にも襲われ始めた。県道17号は本当に海沿いの道で、すぐそこは崖で下には真っ暗な海が広がっている。「居眠り運転=転落して溺死」という恐ろしい状況だった。溺死だけは嫌だ!と思い、iPhoneの電源を入れて適当な野宿場所をiPhoneマップで探した。

すると、どうやらこの先に「若松海水浴場」という海水浴場があるらしいということがわかった。
しかし、Web検索してもほとんどまともな情報がなかった。今どきWebサイトも構えない海水浴場。なにやらプライベートビーチに近い海水浴場だとかなんとか、非常にわかりづらい場所にある、という記事は見つけたが、それ以上の情報は得られなかった。
本当に知る人ぞ知る海水浴場なのだろう。

そこまで行ってみる決意を固め、眠気と戦いながら「若松海水浴場」を目指した。

そこで恐ろしい目にあうことも知らずに。

恐怖の野宿決行@若松海水浴場

wakamatsukaisuiyokujoumap
地図が指し示す「若松海水浴場」の付近にまで来た。断崖沿いの道にもかかわらず、ガードレールも途切れ途切れの道である。

外灯一つなく、海水浴場とマップに書かれている場所にはゴツゴツした岩場が白波をたたえている・・・。

(おかしい・・・海水浴場というからには白い砂浜があって・・・)

と思って懐中電灯であたりを照らすと

廃墟

廃墟and廃墟

明かり一つない海辺で廃墟

恐怖でしかない。

恐らくかつてこの海辺の道が栄えていたころに海の家として使われていたであろう建物が暗闇の中に浮かんでくるのである。

誰もいないはずの廃墟から声が聞こえたらどうしよう!
とか
得体のしれない生き物に襲われてそのまま海に引きずり込まれるのでは?!
とか

そういうたぐいの妄想が更に恐怖をかきたてる。

震える手でiPhoneを握りしめ、目的地である「若松海水浴場」についての情報を検索する。

その海水浴場の入り口には入り口を示す看板があるそうだ。
だがここにはない。廃墟の横に雑草にかき消された獣道があるが海と反対の方向に伸びてるし絶対違うし

何より絶対にそこ入ったら呪い殺される気がする

(※あくまで当時の心理状況です)

検索結果に出てきた入り口の看板を探すためしばらく走って偵察を続けた。

果たして・・・
あった・・・!!

原付きであたりを照らしつつ坂道を降りると・・・

駐車場らしき平坦な場所に出た。ただ、明かりが原付きのライトしかないので周囲がどうなっているのかは皆目検討がつかない。

試しにエンジンを切ると

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

明かりゼロ

かろうじて沼津の港から届く光が分かる程度で、走ってきた道路に外灯はひとつもないし、明かりを灯す建造物が一切ない。

The 闇.

海岸の波の音以外は無音。
少しでも風がふけば恐怖である。

しばらく夜目に慣れるのを待ったが、それでも闇。諦めてiPhoneのライトを使って探索すると

カサカサカサカサカカサカサカサカサカサカカサカサカサカサカサカカササッ

この音、聞き覚えがある☆

Unicode
Wikipediaより
凍る背筋。

それに加え、ニチャニチャという音が聞こえるので凝視すると

Wikipediaより
Wikipediaより

イワガニの大群。

カニは一匹ならばかわいいけど、大量に集まるとただのグロい生き物である。
それらフナムシ、イワガニの大群に囲まれていることにまず恐怖を覚える。

そのあとに

ドン

音のした方向にiPhoneのライトを向けるとそこはかつて使われていたであろう脱衣所の小屋だった。

恐怖しか湧いてこない☆

風の音、波の音、風で木々が揺れる音、フナムシの走る音、イワガニが集結する音

すべてで恐怖が最高潮に達した。
怖すぎて親に電話した

ぼく「もしもし!おとーさん!!ヤバい!ヤバいとこきちゃった!!」
父「おー、もう少し安全なところに行って寝たらどうだ」
ぼく「もうガソリンないし眠いし怖いし動けないよ!!!!(涙声)」
父「そこから先、もう30キロ走った地点にお寺があるからそこで(ビビビッ、ガーーーーーー、プチッ、ツー、ツー、ツー」

なに、いまの

恐怖が最大級に達した。
とにかく、明かりをつけよう、そういう一心で原付きにエンジンを入れてライトを灯す。

ガソリンがもう1/4しかない。一晩持たずに切れることは必定。

iPhoneの充電も20%を切っていた。iPhone以外に明かりをともせる道具は持っていなかった。
恐怖からなのか頭がフル回転する。どうする!どうする!脱出するにもガソリンが不安すぎる!
iPhoneも電池が持たない!

そのとき、太古よりDNAに刻まれた人間の本能が目覚めた

「火を起こすしかない」

iPhoneのライトで周囲を照らすと、幸い火を起こした形跡のある石積みがあった。

震える手で焚き木を拾い集める。
それから乾燥した落ち葉も集める。

小学生の頃のキャンプの記憶をフル稼働させて焚き木を組んだ。

一刻も早く恐怖から逃れたかった。

問題は種火(たねび)である。

財布からレシートを取り出してそれを種火にしようと思った。

ライターでレシートに火をつけ、枯葉に引火させようとするも失敗。
再度、挑戦、失敗。何度も挑戦したけど失敗。
レシートも心もとなくなってきた・・・。もう燃やすものがない・・・。
何かないかと思ってバックパックを探る。

iPhoneが限界を迎えそうで手が震える。充電器は持っていたがこの時パニック状態でそんなことは頭から飛んでいた。

そのとき閃いた。

20140826230402944

ポケットティッシュ!!!!!

勿体ないけど背に腹は変えられない。ひとたば取り出して、ライターで火をつける。

勢いよく燃え始めたポケットティッシュを焚き木の上に添えると見事枯葉に引火。

ついに火が炊けた!!

この間にとにかく焚き木と落ち葉を集める。
折れたばかりの生木は油を含んでいるため、火にくべると勢い良く燃えることを発見した。

炎があることで謎の安堵感が湧いてきた。

きっとまだ文明がなかった頃の人類も同じ気持ちだったのかもしれない。
原始人はこうして安堵を得たのだろうか。

しかし、相変わらず周囲に何があるかは暗すぎて分からない。この火だけが唯一の明かりである。

わかっていることは

  1. 走ってきた県道を通る車がひとつもないこと
  2. 周囲が森に囲まれていて、どうやら目の前が海であること(すぐそこから波の音がする)
  3. 明かりが皆無なため、星がめちゃくちゃ見えること

くらいだった。

襲い来るフナムシとイワガニの大群に囲まれながら、レジャーシートを敷いて、バスタオルを布団に眠ることにした。
耳を澄ますと聞こえてくる

ニチャニチャ・・・ニチャニチャ・・・

あの音が忘れられない。

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